森の東アルプス ~秩父山塊~続きの続き。

2013年9月

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森の東アルプス ~秩父山塊~ - the longer the higher

森の東アルプス ~秩父山塊~続き。 - the longer the higher

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5:10甲武信ヶ岳 徳ちゃん新道入口
7:50甲武信ヶ岳
11:00国師ヶ岳
11:35金峰山登山道入り口
12:50金峰山
14:10大日岩
15:00富士見平小屋
15:50瑞ガキ山
17:20小川山林道入口
18:00信州峠
19:10川上村スーパー ナナーズ着
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道の駅ではほとんど寝られず朝を迎えてしまった。外に出るとまだ星が見える。そして何よりも寒い。この程度ではまだ序の口だとは思うが凍てつく寒さだ。吐く息も白い。3日目の行程にはボクが行きたかった山全てが詰まっている。
甲武信ヶ岳という山名に魅かれ、金峰山の五丈石をこの眼で見たいと思い、小川山でクライミングをした時に見たミズガキ山を登ってやりたいとずっと思っていた。
いずれの山も単体としてボクには見れなかった。東アルプスの存在を知ってからは3つで1セットだと。
登山道入り口から登りが続く。10分も歩くともう夜が明け始め、体も熱くなってきた。もう防寒具は必要ない。待ち望んでいた青空も広がり、やる気がわいてくる。
途中で振り返ると富士山が見えた。高度を上げるたびに富士山も高く、でかく見えその日本一の山であるという絶対的な存在を感じさせる。
影場は寒い。足元を見ると霜柱が立っている。山の秋は街で言うともう冬だ。
約2時間半で登頂。眺望は最高で更に先へ進むエネルギーにもなる。

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ここからのトレイルが素晴らしかった。倒木は多いものの、ゆるい下り基調のトレイルが続く。2000m以上の高度で走っているんだという優越感がたまらない。足の回転も速くなる。長いトレイルを終え、国師ヶ岳へ到着。向かうは一番気になっていた金峰山だ。

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一度車道まで降りてからの登り。駐車場には結構な車がとまっていたので、人が多いことを予想していた。山はみんなのものだけど、山頂でガヤガヤうるさくされるのとか、メシを大人数で食べている光景はあまり見たくない。
この道も今まで同様、地図にある時間よりも早く着く。森林限界を超え山の稜線に出ると、むき出しの岩だらけだ。オレンジ色に染まり始めている葉とミドリの葉の色彩がとても綺麗だ。山頂へ向かうと、念願の五丈石が姿を現す。その異質で、神秘的な存在に圧倒され、いつもなら5分と留まらない山頂に20分くらい居てしまった。

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時間がせまってくる。残すはミズガキ山のみ。時間がないともわかっていながらも、何度も振り返ってその景色に見とれてしまった。本当にイイ山だ。
先を急ぎ、大日岩を通り過ぎ、富士見平小屋まで降りて来た。もう15時だ。ミズガキへの道を進もうとすると小屋の方が「これからですか。行くのに2時間、戻ってきて2時間で暗くなってしまいますよ。」と忠告をしてくれた。本当はそんなことを言わせてしまうような行為はしたくない。が、どうしてもいきたい。
ボクの中でも選択肢があり、15時30分までにこの小屋に着けなかったら諦めて温泉に入って、バスで駅まで向かい帰ろうと思っていた。実際は15:00に着いた。ここからぶっ飛ばして登って、来た道は戻らずに反対側の下山路をとり、そこから信濃川上駅まで走ることにしたのだ。真っ暗になる前に山から下りてしまえば何とかなる。
自分に細心の注意を払うように言い聞かせ、ミズガキ山への道を走り始める。もちろんトップギアで。一般の人が2時間かかる道を50分で登りきった。そしてミズガキ山からの眺望は最高のご褒美だ。岩の上で走ってきた方角を見つめる。
「ありがとう。東アルプス。」

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猛スピードでのぼったように、猛スピードで帰らないといけない。もう16時をまわる。暗くならないうちに人里へは降りれる。実際に降りたが、ここからが本当に自分でも呆れてしまうくらい大変だった。

小川山林道を抜け、信州峠手前の集落に着く。18時前だ。ここから信濃川上駅を目指す。地図を見る限り10kmあるかないかということは把握していた。しかし、駅を目指す前に大切なことがある。
『食料の補給』
まさかの二度目の食糧難。バッグにはクルミだけがたくさん残っている。10kmだけだったらと思い、山頂で他の米などは食べつくしてしまった。そして信州峠を超えるころに空腹は襲ってくる。あとは下りだと安心していたら間違えで、クルミをいくらほおばっても力が出ない。足を止めると体が冷えてしまう。集落の手前にあった自販機は買おうとしたコーラが売り切れで、パスしてしまった。なんて馬鹿だ。終電は20時35分。防寒具を着てゆっくり歩いてもいいがそれでは余計に長く感じてしまう。空腹で手もなんとなく震えてくる。寒さが原因じゃない。空を見上げると満点の星空が見える。「最後にこんな綺麗な星も見られるなんて。」と笑ってみる。自分を落ち着かせるために。遠い。やたら遠く感じる。降りて行く道は畑が広がり、出荷の準備か何かをしている人もいた。でも助けは求めたくない。まだぶっ倒れないから大丈夫。「腹が減って動けないんです。」なんていったらどんな反応をされるのだろうか。
道路標識が見えてきた。とりあえず真っすぐ進み、駅にはダイレクトにいかないで、コンビニがある道を選んだつもりだった。が、あるはずのコンビニが見当たらない。「終わった。」右手にはなにやら明かりが見える。倉庫っぽくも見えたが、行ってみるとスーパーマーケットだった。
「助かったー!」と思わず声に出して言ってしまった。その後、食料を食い漁りタクシーを呼んで駅まで向かった。

馬鹿野郎の旅は終わりました。